レンズの技術、とくにコーティングはものすごい進歩をとげた。もともとコーティングはレンズの「焼け」(光に曝された結果としての経年変化)によって、かえって光の透過率が増えることにヒントを得て開発されたもの。最初はフッ化マグネシウムなどの膜を1層だけコーティングしていたが、カール・ツアイスが1940年前後に多層膜コーティングを開発。日本でも千代田光学精工(のちのミノルタ)が2層膜の「アクロマチック・コーティング」、別名「緑のコーティング」を実用化した。そして、旭光学光学工業(のちのペンタックス)が最大7層の「スーパーマルチコーティング」を開発して、マルチコーティング流行のきっかけを作った。現在では、多層膜コーティングが常識であり、全交換レンズに多層膜コーティングが施されていると言っていい(全面ではないが)。そして、最近ではナノミクロン単位の構造体をコーティング材料に使った新しいコーティングが開発されている(ニコンのナノクリスタルコーティング、キヤノンのSWCなど)。これで、透過率が大幅にアップすることになり、逆光時のフレアやゴーストもほとんど出ないようになった。ただ、この「ナノコーティング」は万能ではなく、また施すレンズ面もレンズ設計により限られてくる。だから、なんでもかんでも「ナノコーティング」にしろ、というような意見や、「ナノコーティング」ならレンズの諸収差も補正できるという過大評価は間違っているのである。諸収差は、非球面レンズ、低分散レンズ、あるいはレンズの構成やパワー配分などによって解決されるものであり、コーティングではない。このような過大評価は「なんでもファームアップ」と同じで、本来万能でないものに万能を求めることになってしまうが、最近ではその傾向が強まったように思う。技術の進歩が急なので、正しい知識を身につけるのは大変だが、それなくして断定的な考えかたをすると、間違った方向に行ってしまうだろう。
来週はいくつかのメーカーからカメラやレンズの発表があると思われる。どのメーカーだか特定はできないが、少なくとも数メーカーから新製品が登場するだろう。
パターンとして面白かったので撮った看板広告。この場合には、露出補正をややオーバー目にした。ニコンD7100、DX VR 18~300ミリF3.5~5.6G、絞りF5.6、絞り優先AE、JPEGラージファイン、AWB、ISO400。