デジタルカメラはフィルムカメラよりも連写性能が高くなってきた。エントリークラスのカメラでも毎秒6-8コマぐらいは当たり前で、ミラーレスカメラではミラー連動が不要なため、さらに高速連写が可能になってきた。ところが、高速連写をすると問題が起きるようになったのも事実だ。それは連写し過ぎて枚数を多く撮ってしまい、あとでのセレクトが大変という問題だけではない。高速動体がカメラに向かってくるような条件では望遠ズームレンズではなく、単焦点望遠レンズのほうがピント精度がいいという問題が出てきてしまったのだ。これは最近のズームレンズでは古典的な4群ズーム、すなわちフォーカシング、バリエーター(変倍系)、コンペンセーター(補正系)、リレーレンズ(結像系)は大型化すぎるのでかわりに、バリエーターのレンズ群にフォーカシングの役割を持たせたものが定石になってきている。このバリエーターによるフォーカシングはAF機構の搭載によって、測距情報を毎秒60回など更新することで、バリエーターによる焦点移動を防いでいるからだ。しかし、測距情報更新は毎秒60回でも、ピントの出し直し(=焦点移動の防止)はレンズ系を動かすわけだから、高速動体に対してズーミングをしながら高速連写をすると、AF情報によるフォーカシングレンズの移動が追いつくまでは何コマかのピントズレが起きてしまう。4群ズームの時代には非線形運動のカム機構によってバリエーターを動かせば、リアルタイムでコンペンセーターも動き、焦点移動が防止されてきた。しかし、現在では小型軽量化のためにバリエーター群の中のフォーカシング系レンズをモーターで動かさなければならないために、古典的なカムによるメカニカルコンペンセーションよりも焦点移動回避がワンテンポ遅れてしまう。一眼レフ用のレンズでもこのような形式が増えてきているため、ズーミング(バリエーターの移動)による焦点移動を防ぐには単焦点望遠レンズのほうがいいという結論になる。単焦点望遠レンズは大口径のためもあって高価で、かつ大きく重くなるが、高速動体をとくに近距離で撮影する場合には望遠ズームレンズより安心できるということになるわけだ。
空自入間基地所属中空司令部支援飛行隊のT-4高等練習機(いわゆるシルバーインパルス)。JPEG撮って出しだが、トリミングしてある。ソニーNEX6、タムロン18-270ミリF3.5-6.3、マウントアダプター使用、1/400秒、シャッター優先AE、AWB、ISO100。