ミラーレスカメラの記録メディアは各社各様だが、とくにいま話題となっている35ミリ判ミラーレスカメラに焦点を当ててみよう。先行しているソニーはα7III/α7RIIIにSDカードのダブルスロットを採用している。一見理想的なのだが、じつはSDカードスロットが2つと言っても、スロット1のみUHS-IIに対応し、スロット2はUHS-I対応である。なぜ、スロット2をUHS-I対応としている理由はソニー独自のメモリースティックDuoという記録メディアに対応させるためである。このため、スロット1の最大転送速度は312MB/秒だが、スロット2は104MB/秒であり、ダブルスロットのメリットであるバックアップ記録では遅いほうのUHS-Iに合わせることになる。ニコンZ 6、Z 7はXQD2.0のシングルスロットだが、最大転送速度は440MB/秒と早い。そして、CFexpress1.0に対して上位互換性を持っているため、将来さらに高速化されても対応できる。キヤノンEOS RはSDのシングルスロットで、UHS-II対応だから、最大転送速度は312MB/秒ということになる。ニコン、キヤノンともにシングルスロットにしているのは、現在の記録メディアの方向性がやや混迷しているからだ。SDカードにはUHS-IIIという規格(最大転送速度624MB/秒)とSD Express(最大転送速度985MB/秒)とが並立していて、両者の間に互換性はない。UHS-IIIなら下位互換性があるため、転送速度は落ちるがUHS-II、UHS-IのSDカードを使うことができる。SDカードは各メーカーともようやくUHS-IIに移行し始めたところで、将来UHS-IIIなのかSD Expressなのか不透明である。すでに海外発表され3月末の発売が予定されているパナソニックのS1/S1RはXQDとSD(UHS-II)のダブルスロットである。カメラの大きさからするとXQDのダブルスロットも可能だったかも知れないが、XQDとSDのダブルスロットにすることで「保険をかけた」とも見ることができるだろう。なお、XQDとUHS-IIでは転送速度がちがうので(記録メディアによるが)、バックアップ記録は転送速度の遅いSDカードに合わせることになる。このように記録メディアが過渡期であり、昔のCFカードやSDカードのような統一性を求めることがむずかしくなってきている。
JPEG撮って出し。ソニーα300、ミノルタAPOテレ400ミリF4.5、絞りF5、絞り優先AE、AWB、ISO400。