ニコンとキヤノンの35ミリ判ミラーレスカメラに関する戦略が対照的だ。ニコンはZ 6とZ 7という画素数が大きく異なる2機種を用意して、ソニーのα7IIIとα7RIIIに真正面からぶつけた。ボディー内手ブレ補正機構もあり、スペック的にα7IIIとα7RIIIを超えるカメラを発売するという作戦のように思える。しかし、交換レンズは24-70ミリF4、35ミリF1.8、50ミリF1.8、そして14-30ミリF4と比較的安い製品をラインアップしている。もちろん、24-70ミリF2.8も発売され、ロードマップには大三元ズームレンズもあるのだが、とっつきは小型でそれほど高価格でないレンズを揃える作戦のようだ。
これに対してキヤノンは、まず画素数がα7IIIとα7RIIIの中間のような画素数のEOS Rを出し、そして第2弾として画素数ではα7III寄りだが、小型軽量と低価格をポイントにしたEOS RPを発売した。手ブレ補正はEOS R、EOS RPともにレンズ内機構であり、ボディー内手ブレ補正機構は採用しなかった。つまり、α7IIIやα7RIIIと直接の対決を避けた機種を出したとも見ることができる。スペック的に直接競合しないかわりに、価格で勝負するという戦略に見える。しかし、レンズは24-105ミリF4、35ミリF1.8マクロのほかは、50ミリF1.2とか28-70ミリF2という高級で高価なレンズであり、つぎの製品も85ミリF1.2と見られる。つまり、カメラとは逆にレンズでは高級路線といえる。レンズでユーザーを引き寄せようという作戦なのだろうか。
ニコンとキヤノンのカメラとレンズの方向性が真逆であり、むしろ両社の作戦を入れ替えたほうがいいのではないかとも思える。つまり、ニコンはカメラにふさわしい高級レンズを揃え、キヤノンもカメラにふさわしい低価格レンズを揃えたほうがよかったのではないかということだ。ただ、これは外野が考えたことであって、当のメーカーには部外者には計り知れない戦略があるのだろう。つぎの一手はニコンが低価格カメラ、キヤノンが画素数の多い高級機ということになると思われる。そのときにレンズがどのようにどれだけ揃っているかによって、両社の戦略がさらに明白になるのではないかと思う。
JPEG撮って出し。ニコンD7200、AF-S DX VR 18-300ミリF3.5-6.3G、絞りF8、1/500秒、AWB、ISOオート。